春日山原始林を未来へつなぐ会

入門講座

春日山原始林入門講座 第3回 動物編を実施しました。

2015年03月26日

本日、春日山原始林入門講座の第3回を実施しました。
1月から月1回のペースで実施してきた入門講座も最終回です。
今回は、「動物編」として、以下の講義を行いました。

・春日山原始林のほ乳類 講師 鳥居春巳 さん(奈良教育大学 特任教授)
・春日山原始林の野鳥  講師 川瀬浩 さん(日本野鳥の会 奈良支部)

最終回ということもあり、今回は最後に参加者の方々から意見を伺うフリーディスカッションも行いました。

■春日山原始林のほ乳類
鳥居先生は、長年春日山原始林のシカを研究されており、奈良県の「奈良のシカ保護管理計画検討委員会」の委員も努めていらっしゃいます。そのため、冒頭は奈良公園のシカ、及び春日山のシカの話を中心にお話しいただきました。

基本的なこととして、奈良公園の平坦部と春日山にいるシカは「別の生き物」と考えた方が良いというくらい、違っているそうです。人間に慣れている平坦部のシカと、人になれていない春日山のシカとは、修正も大きく違うということでした。

また、原始林内のシカについては、周遊道を時速10キロ位で走りながらライトを照らし、反射したものを数える「ライトセンサス」という方法と、決められたエリアを横並びに一斉に歩きながら調査する区画法の二つを行い、そこから想定して概ね90頭程度が生息しているのではないかとのことでした。

この頭数が多いか少ないかという点については、環境省が提示したシカの適正頭数というのがあり、それで考えると原始林を約300ヘクタールと考えると2頭程度ということで、原始林内も奈良公園の平坦部同様にシカが相当増加しているということでした。

それでは、シカ以外にどのような生き物が生息しているのか。
モグラやコウモリ、サル、ウサギ、リス、ネズミ、イタチ、タヌキ、アナグマ、イノシシ、などの他、外来種とされるハクビシンやアライグマ、ヌートリアなども観測されているということでした。
ただし、これまでに観測されているものなので、現在は絶滅しているものもいるのではないかということでした。
その理由として、原始林の乾燥化により、これらの動物たちの生息する環境が少なくなってしまっている。ということです。

県が設置している植生保護柵などを作ることで、下層植生が少しでも回復していくことで、ほ乳類の生息環境が整えば戻ってくるのではないかというお話もいただきました。

鳥居先生のお話は、少し過激な発言とユーモアが入り交じりとても興味深く伺うことができました。

■春日山原始林の野鳥
最後に、野鳥の側面からすると原始林の今の状態は絶望的である。ということでした。けれど、何もしないわけにはいかない。少しでも良いから、原始林の生態系を豊かなものへ戻していくことをすることが大切なのではないかということでした。

■参加者の方々とのフリーディスカッション
最後に、会場の方々と今後のつなぐ会の活動について期待することや「こんな事をやりたい!」と行った意見交換の場を持ちました。はじめは遠慮がちでしたが、様々意見をいただき、また、講師の鳥居先生も色々な情報やご意見をいただく事ができ、充実した内容となりました。
次年度以降、具体的な活動に向けて準備を進めているところですが、原始林の未来を皆さんでどのように描いていくか、それは、「つなぐ会」だけでなく、様々な関係者の方々と手を取り合いながら進めることが必要だと感じました。

(文責 事務局 杉山拓次)

春日山原始林入門講座 第2回を実施しました。

2/26(木) 春日山原始林入門講座の第2回を実施しました。

今回は、春日山原始林の巨樹についてと、原始林の森林生態系について学ぶ機会となりました。
冒頭は、本会副会長でもあり、グリーンあすならの甲斐野さんより原始林の巨樹についての講義です。
当初の予定では、外へ出ての観察と言うことでしたが、この日は生憎の雨。
室内でじっくり学ぶ機会となりました。

講義では、原始林内の巨樹について、グリーンあすならで過去に調査した結果などを元に、どのような巨樹が存在しているかについて知ると共に、巨樹の定義などについて学びました。また、原始林全体の地図を示しながら、今後のつなぐ会で実施していく保全活動について、どのようなことを実際にやっていくかなどについても解説がありました。
講義は、一方的なものではなく、実際の木材標本を持ってきて木に触れる体験を入れるほか、随時会場からの質問に答えながらの講義で参加者の理解も深まる講義となっていたようです。 後半は、大阪産業大学の前迫ゆり教授から「春日山原始林の森林生態系とシカとの共生」をテーマに講義をいただきました。こちらは、原始林の森林生態系の基本的な樹木構成などについて学んだほか、現在大きな影響を与えているシカとの関係について学びました。 今後の活動についての具体的なイメージと、現状について把握する良い機会となりました。

春日山原始林入門講座 第1回を開催しました。

2015年02月05日

1月29日(木)に会員向けに「春日山原始林入門講座」を開催しました。
この講座は、今後、「春日山原始林を未来へつなぐ会」が原始林の保全活動に取り組んでいくにあたって、原始林の歴史と現状について、理解することが重要であると考え実施するものです。

講座は、1月から3月まで月1回の全3回で実施することになっており、今回はその初回でした。

内容は以下の通りでした。
1.記念講演 「春日山原始林への思いを語る」 小船武司(元奈良の鹿愛護会事務局長)
2.春日山原始林の保全再生 奈良県まちづくり推進局奈良公園室
 (1).奈良公園の現状と春日山原始林保全再生の取組み
 (2).春日山原始林の歴史と位置付け
 (3).春日山原始林保全再生の進捗状況

会場の奈良学セミナーハウス研修室は、会員の方々で満席となりました。
あらためて、意識の高さを感じる機会となりました。


講演は、はじめに元奈良の鹿愛護会事務局長の小船武司先生でした。
小船先生は、元々春日大社に勤務された後、県庁の鳥獣保護関連の部署に勤務され、その後、奈良の鹿愛護会の事務局長に就任されるなど、春日山原始林との深い関わりをもっていらっしゃいます。
その経験から、現在原始林へ樹勢を拡大しているナギの問題やナンキンハゼの問題、また、原始林内への鹿が入ってきたことと、狼や野犬との関わりについてお話しされました。

いずれもご自身の経験に基づくお話で非常に興味深かったのですが、特に印象に残ったのは、歴史の中で何度かダメージを受けてきた原始林ではあるけれど1000年にわたって、維持されてきた森林が、この20年で急激に変化してきているということです。
「つなぐ会」は市民のボランティアが中心となって活動を展開する団体ですが、微力ながら私達の取り組みによって、原始林を未来へつなぐための一助になればと感じました。

次に、奈良県まちづくり推進局奈良公園室からの講演でした。
 (1).奈良公園の現状と春日山原始林保全再生の取組み
 (2).春日山原始林の歴史と位置付け
 (3).春日山原始林保全再生の進捗状況


3つにわけて、解説いただき、つなぐ会の立ち上げにかかわる部分の他、春日山原始林を奈良県が管理するに当たっての経緯や原始林の範囲など、基本的な部分を確認することができたほか、現在、奈良県として原始林の保全にどのような対応をしているのかを具体的に伺うことができました。
「つなぐ会」の活動は、県との協力関係がなければ実現されません。
県の原始林に対する保全活動を「つなぐ会」としてサポートするとともに原始林を未来へつないでいくために必要な対策を共に考え取り組んでいくべきだと考えています。

平日の午後にもかかわらず、会場は満席。長時間にもかかわらず、集中力の高い講座となりました。
今後も2月、3月と会員同士で学び、今後の保全活動、そして原始林をもっと知っていただく「普及啓発」にも力を入れていきたいと考えています。