春日山原始林を未来へつなぐ会

事務局日誌

春日山原始林遊歩道北部観察研修会を実施しました。

2015年03月25日

3月18日と22日に、春日山原始林を未来へつなぐ会の会員さん対象に「春日山原始林北部遊歩道観察研修会」を開催しました。いずれの日程も30名弱の会員さんがお越しくださいました。

今回の観察会は、前回1月に開催した南部の遊歩道に続いて、北部の遊歩道から、原始林の現状を見て、今後のつなぐ会で実施する保全活動について、イメージを持ってもらう事が目的です。

はじめに原始林の遊歩道の開始地点を確認しました。遊歩道の北部は、月日亭の所まで自動車の乗り入れができるようになっています。この道を歩きながら、途中、今はもう倒れてしまい跡形もなくなったムクロジの巨木の話などしながら、原始林へと向かいます。

周りの景色が少しずつ森の中という雰囲気に入ったところで、多く見られるのが「ナギ」。
葉っぱ一見すると広葉樹のように見えますが、よく見ると葉脈が縦に流れており、針葉樹に分類されています。
本来暖かな地域に自生する木なので、熊野地方では古くから神木として利用されており、熊野信仰が盛んな頃に献木されたものではないかとされています。

この樹を参加者の皆さんに触っていただき印象を聴くと「堅い」という声が。このナギの樹は成長が遅いため細くても樹齢は100年を越えるものもあり、そのためガッシリとしているようです。

そこからしばらく歩くと、今度はネットが張ってある大木が現れました。
これは、現在全国的にも問題になっている「ナラ枯れ」を予防するためのネットです。カシノナガキクイムシという昆虫が原因で、ドングリの木が枯れてしまう病気を防ぐために、原始林では大きな樹を中心に数百本のネットが巻かれています。遊歩道を歩く中であちこちに見られます。この被害が、原始林でどれだけ広がってしまうかによって、今後の原始林の森林生態系が大きく変化してしまう恐れがあると言われています。
(参考:林野庁/ナラ枯れ被害 http://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/naragare.html
その後も、ゆっくりと歩きながら、照葉樹林を構成しているシイ・カシ類の樹木や、原始林内の巨木として数多く見られるモミやスギの巨木を見たり、ナギ同様にシカが食べないことなどから原始林内に多く見られるサカキやアセビ、シキミなどを観察しながら歩きました。
また、大きな樹が沢山ある春日山原始林ですから、土壌が非常に豊かなのかと考えがちですが、遊歩道沿いの崩落箇所などを見ると、非常に薄い土の層の下は岩があり、多くの木々ができる限りの根を伸ばして、生きています。また、それと同時に下層植生(地面に生えている笹などの植物)がほとんどないということにも気がつきます。約20年ほど前までは、藪が存在し、そこに生きる野鳥なども多く見られた原始林ですが、現在乾燥化が進んでおり、観察できる野鳥もかなり変化があると言うことでした。
ゆっくり歩いて、若草山頂上へ到着。普段なら1時間もかからずに上ってしまう遊歩道を倍近くの時間を掛けて上ってきたため、ここで昼食となりました。
18日も22日も春の陽気となり、頂上ではチョウも発見、また、キツツキの仲間のアカゲラを見ることもできました。

その後、原始林を見渡し、原始林がモコモコしている常緑広葉樹と尖っている針葉樹で構成されていることや、春日大社のご神体でもある御蓋山との位置関係なども確認し、原始林全体のイメージを地図で確認した後、研修は終了となりました。
原始林で起きている問題をよくよく見ていくと悲観的な気持ちになってしまいますが、「つなぐ会」が目指す原始林とはどのような姿なのか。会員の皆さんをはじめ多くの方々とイメージを共有しながら、未来へつなぐ活動を進められればと感じました。


おまけ。アカゲラの写真。
デジカメをズームするとなかなか捉えられず。何とか画面の端に入っていました。 (文責:事務局 杉山拓次)

春日山原始林入門講座 第2回を実施しました。

2/26(木) 春日山原始林入門講座の第2回を実施しました。

今回は、春日山原始林の巨樹についてと、原始林の森林生態系について学ぶ機会となりました。
冒頭は、本会副会長でもあり、グリーンあすならの甲斐野さんより原始林の巨樹についての講義です。
当初の予定では、外へ出ての観察と言うことでしたが、この日は生憎の雨。
室内でじっくり学ぶ機会となりました。

講義では、原始林内の巨樹について、グリーンあすならで過去に調査した結果などを元に、どのような巨樹が存在しているかについて知ると共に、巨樹の定義などについて学びました。また、原始林全体の地図を示しながら、今後のつなぐ会で実施していく保全活動について、どのようなことを実際にやっていくかなどについても解説がありました。
講義は、一方的なものではなく、実際の木材標本を持ってきて木に触れる体験を入れるほか、随時会場からの質問に答えながらの講義で参加者の理解も深まる講義となっていたようです。 後半は、大阪産業大学の前迫ゆり教授から「春日山原始林の森林生態系とシカとの共生」をテーマに講義をいただきました。こちらは、原始林の森林生態系の基本的な樹木構成などについて学んだほか、現在大きな影響を与えているシカとの関係について学びました。 今後の活動についての具体的なイメージと、現状について把握する良い機会となりました。

春日山原始林入門講座 第1回を開催しました。

2015年02月05日

1月29日(木)に会員向けに「春日山原始林入門講座」を開催しました。
この講座は、今後、「春日山原始林を未来へつなぐ会」が原始林の保全活動に取り組んでいくにあたって、原始林の歴史と現状について、理解することが重要であると考え実施するものです。

講座は、1月から3月まで月1回の全3回で実施することになっており、今回はその初回でした。

内容は以下の通りでした。
1.記念講演 「春日山原始林への思いを語る」 小船武司(元奈良の鹿愛護会事務局長)
2.春日山原始林の保全再生 奈良県まちづくり推進局奈良公園室
 (1).奈良公園の現状と春日山原始林保全再生の取組み
 (2).春日山原始林の歴史と位置付け
 (3).春日山原始林保全再生の進捗状況

会場の奈良学セミナーハウス研修室は、会員の方々で満席となりました。
あらためて、意識の高さを感じる機会となりました。


講演は、はじめに元奈良の鹿愛護会事務局長の小船武司先生でした。
小船先生は、元々春日大社に勤務された後、県庁の鳥獣保護関連の部署に勤務され、その後、奈良の鹿愛護会の事務局長に就任されるなど、春日山原始林との深い関わりをもっていらっしゃいます。
その経験から、現在原始林へ樹勢を拡大しているナギの問題やナンキンハゼの問題、また、原始林内への鹿が入ってきたことと、狼や野犬との関わりについてお話しされました。

いずれもご自身の経験に基づくお話で非常に興味深かったのですが、特に印象に残ったのは、歴史の中で何度かダメージを受けてきた原始林ではあるけれど1000年にわたって、維持されてきた森林が、この20年で急激に変化してきているということです。
「つなぐ会」は市民のボランティアが中心となって活動を展開する団体ですが、微力ながら私達の取り組みによって、原始林を未来へつなぐための一助になればと感じました。

次に、奈良県まちづくり推進局奈良公園室からの講演でした。
 (1).奈良公園の現状と春日山原始林保全再生の取組み
 (2).春日山原始林の歴史と位置付け
 (3).春日山原始林保全再生の進捗状況


3つにわけて、解説いただき、つなぐ会の立ち上げにかかわる部分の他、春日山原始林を奈良県が管理するに当たっての経緯や原始林の範囲など、基本的な部分を確認することができたほか、現在、奈良県として原始林の保全にどのような対応をしているのかを具体的に伺うことができました。
「つなぐ会」の活動は、県との協力関係がなければ実現されません。
県の原始林に対する保全活動を「つなぐ会」としてサポートするとともに原始林を未来へつないでいくために必要な対策を共に考え取り組んでいくべきだと考えています。

平日の午後にもかかわらず、会場は満席。長時間にもかかわらず、集中力の高い講座となりました。
今後も2月、3月と会員同士で学び、今後の保全活動、そして原始林をもっと知っていただく「普及啓発」にも力を入れていきたいと考えています。
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