春日山原始林を未来へつなぐ会

お知らせ

【レポート】7/6 春日山原始林 天然記念物指定100周年記念イベント

7/6(日)に春日山原始林天然記念物指定100周年記念イベント「春日山原始林のこれからの100年に向けて」を開催しました。

定員200名を超えるご参加をいただき、盛況のうちに終了することができました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。簡単なレポートをお送りしようと思います。

第1部 春日山原始林の価値を知る

挨拶・春日山原始林保全計画について

冒頭は、奈良公園室 出井室長よりご挨拶いただきました。
その後、公園室奥田補佐より、「春日山原始林の成り立ちと現状」と題してのお話です。春日山の管理の変遷や、過去の写真資料などを多様しながらのお話は、つなぐ会メンバーも学びの多いお話しでした。時間の設定が短くしてしまったのが悔やまれ、非常に濃い内容でした。また機会を改めてじっくりお話しを聞きたい内容でした。

スライドトーク 春日山原始林「生き物たちの暮らす森」
講師 佐藤和斗氏(自然写真家) 

佐藤さんのスライドトークは、動画なども交えて非常に迫力のあるお話しとなりました。佐藤さんが原始林の生き物等を紹介するイキイキしたお話は、多くの方に驚きと感動を与えるとともに、原始林への関心を高めることになったようです。
撮影の苦労話でさえ、楽しそうと思ってしまうほど。森の中で生き物をじっと待ち続ける時間を通して森との対話をされているのだなと感じました。

佐藤さんは、撮り溜めた春日山原始林の写真を写真集や展覧会を開催予定されており、この日からクラウドファウンディングを始めるそうです。リターン品も素敵なので宜しければ、応援していただけたらと思います。

【世界遺産・春日山原始林いのちの森を未来へ!】佐藤和斗写真集&写真展プロジェクト

第2部 春日山原始林の未来を考える

第2部は、春日山原始林を未来へつなぐ会のこれまでの10年の活動について紹介をさせていただいたのち、パネルトークを開催しました。

パネルトーク「春日山原始林のこれからの100年に向けて」

パネリスト(左から)
・松井淳氏(春日山原始林保全計画検討委員会委員長)
・朝廣佳子氏(鹿サポーターズクラブ代表)
・竹田博康氏(前奈良県観光局長)
・河原宏吉(春日山原始林を未来へつなぐ会会長)

テーマ1春日山原始林をどのように保全していくのか

原始林保全検討委員会の委員長も務められている松井先生に保全の取り組みに今後どのようなことができるかをお話しいただきました。
春日山原始林は、1980年代以前に研究者が課題として指摘していたことがそのまま解決されず危機的な状況となっているということですが、一方で保全するということ、森に手をいれるということに対して、否定的な考え方を持つ人もおり、保全の必要性への理解や、原始林への関心や現状の理解が必要であることを指摘されていました。

また、会長からもやはり多くの人が森を訪れて注目してもらうことが、森を守っていこう、つないでいこうという動きのキモになるのではと話しました。

テーマ2春日山原始林とシカ、人との関わりのあり方

保全の中でもポイントとなるシカの関わり。奈良公園平坦部でシカと人との共生をテーマに、シカとの触れ合いかたについて啓発をすすめている鹿サポーターズクラブの朝廣さんからは、鹿のことについての理解を深める必要があることが重要で、原始林についても同じではないかとお話しされました。

よくわからないもしくは、一つの側面だけを見て物事を判断するのではなく、多面的に見る必要性、もしくは、そうした視点を提供することの必要性を考えました。

また、原始林のシカが約100頭程度いるということについては、松井先生から面積あたりの頭数としては非常に多いという指摘もありました。大台ヶ原の事例で、1キロ平方メートルあたり5頭という目標値でも植物が想定していた通りには回復しない状況などもある事例を出しながら、奈良公園や原始林のシカの頭数について、来場者の方々もも考るきっかけになったのではないかと感じました。

そして、シカの立場になったとしても、本来食べないもの(好物でないもの)を食べている現状は、幸せとは言い難いのではないかと会長が指摘しました。

シカは奈良にとって重要ですが、人がどのように関わっていくかを知恵を出し合って検討する必要があると感じています。

テーマ3春日山原始林の利用 展望と課題

次にテーマは利用へ。インバウンドを中心に来訪者が多く訪れる奈良公園でさまざまな課題が出ています。原始林でも外国人の方をよく見かけるようになっていますが、利用のマナー等啓発については、それぞれの立場のかたに伝わりやすい手法を考えていく必要があると竹田さんは指摘されていました。
同様に原始林の価値を伝えるのも、ガイドの存在が必要であったり、看板の設置にしかた一つとっても工夫が必要なのではないかというお話しでした。

一方でガイドをどのように育てるかについては、なかなか担い手がいないという状況や、ボランタリーなガイドが中心となっていることで、未来へつなぐという観点においては、対価をもらって仕事の一つとなるようなあり方が必要なのではないかという話もありました。

テーマ4春日山原始林を未来へつなぐために市民からできること

最後に市民からできることについて、伺いました。松井先生からは、原始林との関わりかたとして、森の木々の種から苗木を育ててもらうことを学校等と連携することで、森とのつながりを意識することにつながるのではないかと提案いただきました。朝廣さんからは、鹿サポーターズクラブとつなぐ会、市民団体どうしで連携してシカや原始林について学び合いを進めていくことができれば良いとの提案をいただけました。

竹田さんからは、参加者のみなさんが今日の話を家族や知り合いの方に話していくこと、そうして地道に伝えていくことが一番簡単にできることなのではと話されていました。実際に、終了後、竹田さんのSNSでシンポジウムのことを発信いただいて、こうした細かな発信が必要なだと少し反省しました(笑)

最後に河原会長からは、つなぐ会でさまざま実施している取り組みを紹介して活動へのお誘いをしてくれました。

春日山原始林のこれからの100年に向けて、森への関心を高めて、森を見つめ続けるひとを増やしていく。その取り組みをこれからも進めていくことが、原始林を未来へつなぐことになると信じて、今後も取り組みを進めていければと思いました。

最後にこうした取り組みに対して、快諾をいただいた、登壇者の皆様、運営面でさまざまなサポートをいただいた奈良公園室の皆様、会の活動を支えてくださっているつなぐ会の会員の皆様に改めて御礼を申し上げます。

(文責:すぎやま)