3月18日と22日に、春日山原始林を未来へつなぐ会の会員さん対象に「春日山原始林北部遊歩道観察研修会」を開催しました。いずれの日程も30名弱の会員さんがお越しくださいました。
今回の観察会は、前回1月に開催した南部の遊歩道に続いて、北部の遊歩道から、原始林の現状を見て、今後のつなぐ会で実施する保全活動について、イメージを持ってもらう事が目的です。
はじめに原始林の遊歩道の開始地点を確認しました。遊歩道の北部は、月日亭の所まで自動車の乗り入れができるようになっています。この道を歩きながら、途中、今はもう倒れてしまい跡形もなくなったムクロジの巨木の話などしながら、原始林へと向かいます。
周りの景色が少しずつ森の中という雰囲気に入ったところで、多く見られるのが「ナギ」。
葉っぱ一見すると広葉樹のように見えますが、よく見ると葉脈が縦に流れており、針葉樹に分類されています。
本来暖かな地域に自生する木なので、熊野地方では古くから神木として利用されており、熊野信仰が盛んな頃に献木されたものではないかとされています。
この樹を参加者の皆さんに触っていただき印象を聴くと「堅い」という声が。このナギの樹は成長が遅いため細くても樹齢は100年を越えるものもあり、そのためガッシリとしているようです。
そこからしばらく歩くと、今度はネットが張ってある大木が現れました。
これは、現在全国的にも問題になっている「ナラ枯れ」を予防するためのネットです。カシノナガキクイムシという昆虫が原因で、ドングリの木が枯れてしまう病気を防ぐために、原始林では大きな樹を中心に数百本のネットが巻かれています。遊歩道を歩く中であちこちに見られます。この被害が、原始林でどれだけ広がってしまうかによって、今後の原始林の森林生態系が大きく変化してしまう恐れがあると言われています。
(参考:林野庁/ナラ枯れ被害
http://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/higai/naragare.html)
その後も、ゆっくりと歩きながら、照葉樹林を構成しているシイ・カシ類の樹木や、原始林内の巨木として数多く見られるモミやスギの巨木を見たり、ナギ同様にシカが食べないことなどから原始林内に多く見られるサカキやアセビ、シキミなどを観察しながら歩きました。
また、大きな樹が沢山ある春日山原始林ですから、土壌が非常に豊かなのかと考えがちですが、遊歩道沿いの崩落箇所などを見ると、非常に薄い土の層の下は岩があり、多くの木々ができる限りの根を伸ばして、生きています。また、それと同時に下層植生(地面に生えている笹などの植物)がほとんどないということにも気がつきます。約20年ほど前までは、藪が存在し、そこに生きる野鳥なども多く見られた原始林ですが、現在乾燥化が進んでおり、観察できる野鳥もかなり変化があると言うことでした。
ゆっくり歩いて、若草山頂上へ到着。普段なら1時間もかからずに上ってしまう遊歩道を倍近くの時間を掛けて上ってきたため、ここで昼食となりました。
18日も22日も春の陽気となり、頂上ではチョウも発見、また、キツツキの仲間のアカゲラを見ることもできました。
その後、原始林を見渡し、原始林がモコモコしている常緑広葉樹と尖っている針葉樹で構成されていることや、春日大社のご神体でもある御蓋山との位置関係なども確認し、原始林全体のイメージを地図で確認した後、研修は終了となりました。
原始林で起きている問題をよくよく見ていくと悲観的な気持ちになってしまいますが、「つなぐ会」が目指す原始林とはどのような姿なのか。会員の皆さんをはじめ多くの方々とイメージを共有しながら、未来へつなぐ活動を進められればと感じました。
おまけ。アカゲラの写真。
デジカメをズームするとなかなか捉えられず。何とか画面の端に入っていました。
(文責:事務局 杉山拓次)