春日山原始林を未来へつなぐ会

事務局日誌

綾の照葉樹林視察

2019年06月25日


6/13-14に、宮崎県にある日本最大級の照葉樹林が残る綾町へ有志で行ってきました。

春日山原始林と同じ照葉樹林が保全されている綾町では、林野庁、宮崎県、綾町、日本自然保護協会、てるはの森の会が連携して、照葉樹林の保全・復元を目指す「綾の照葉樹林プロジェクト」が進められています。

目的は、綾の照葉樹林そのものを見てみたい!という思いとともに、保全の背景や連携の仕組みについてなど、情報交換が目的です。
たまたま、幹事メンバーで現地に知人の方がいることもあることもあり、幹事の有志を中心に伺うことにしました。関空からは午後のフライトしかなかっため、夕方5時前に綾町へ到着。夕飯前に少し町をブラブラします。


役場の隣にある「綾手作りほんものセンター」を覗くと、美味しそうな野菜のほか、加工品などが並んでいます。また、綾町の特徴でもある有機農業の認証制度についての看板なども。
「有機農業の町」を謳うだけあって、その制度もしっかりとされているようです。また、照葉樹林の植物を一部紹介する植栽などもあり、春日山では見ることのないバクチノキなども見ることができました。また、コンコンと溢れる水は飲用可能で、近くに住む方がボトルを持って汲みに来る姿も見ることができました。

宿へ戻ると、夕飯の時間。宿泊した「薬膳宿舎 ビオスごうだ」は、「有機農業の町」「照葉樹林文化都市」といった町の方向性をつくった、当時の町長、郷田實さんの娘さん、郷田美紀子さんが経営する宿。地域で取れた食材を活かした料理を楽しみながら、高度経済成長期の1960年代から照葉樹林を守り、有機農業の町としてまちづくりを進めて行った郷田町長の話、自然を守ることと、食べることのつながりについてのお話など、主人の郷田美紀子さんより伺いつつ、奈良の春日山を中心とした私たちの活動についてもお話をさせていただきました。

翌日は生憎の雨でしたが、いよいよ綾の照葉樹林へ。照葉樹林の保全活動に取り組んでいる「てるはの森の会」の方々にご案内いただき、綾の観光名所でもある「照葉大吊橋」を渡り幻想的な森の姿を見た後、森の案内をしていただきました。

春日山でもおなじみのイチイガシの巨樹のほか、基幹産業であった林業のためのトロッコ道や製材所の遺構なども見つつ、人工林から自然林へと復元を試みている試験地なども見学させていただきました。

また、この日は雨だったこともあり、ヤマビルが沢山登場。春日山と同じように綾の森でもヤマビルは多いそうで、「ヤマビル調査隊」というプロジェクトでヤマビルについての研究も進めているそうです。

驚いたのは、綾の森でも春日山同様に鹿の採食による下層植生の衰退が見られたこと。綾の照葉樹林は2500haと春日山とは比べ物にならない面積があること、近年では少し移動している傾向も見られるとのことから特段対策をとってはいないとのことでしたが、鹿の増加による影響は全国的に見られるということを実感する機会となりました。
それでも綾の森では、後継樹と言えるカシ類がところどころに見え、森の循環がまだ息づいていることを確認することができました。

照葉樹林の視察の後は、「綾町ユネスコエコパークセンター」へ。
町の診療所後を改装してできた施設では、一角にユネスコエコパークの取り組みについて紹介するスペースが設けられていました。
ここでは2012年にこの認証を取った際に尽力された職員の方からお話を聞くことができ、どのような意図でこの認証をとるに至ったかの経緯など伺うことができました。

「照葉樹林を守る」ということから始まったまちづくりは、人と自然のあり方を見つめ直し、丁寧にそれを紡いでいくことが重要であると感じました。

ご対応いただいた皆様、誠にありがとうございました。
(文責:事務局すぎやま)

<参考>
綾の照葉樹林プロジェクト
http://www.rinya.maff.go.jp/kyusyu/aya/index.html

一般社団法人てるはの森の会
http://teruhanomori.com/

綾町ユネスコエコパークセンター
https://ayabrcenter.jp/02.html

薬膳宿舎ビオスごうだ
https://mikiko-gouda.jimdo.com/