春日山原始林を未来へつなぐ会

事務局日誌

【レポート】春日山でシダにまみれる

9月に入り、秋を感じるようになった日曜日。第29回目となる「世界遺産春日山原始林観察会」が開催されました。
今回は「春日山でシダにまみれる」と題してこれまで実施してこなかった「シダ」をテーマとした観察会です。

講師にお迎えしたのは吉野で私設のシダ博物館「しだのすみか」を解説しているシダ好き女子“シダジョ”の木下茉実さん。

今回の参加者も常連さん、会員さんなど20名弱にお集まりいただき和気藹々とシダを楽しみました。

スタートは、春日大社の境内地の森から。大きな杉の麓にある「カミガモシダ」からスタートしました。春日大社や春日山で見られる貴重なシダといえばこのシダということですが、近年の台風等の影響により日当たりが良くなっている箇所が多く、今後の生息環境が少し心配されるところです。

その後はゆっくり歩きながら水谷神社を経由して春日山遊歩道へ。シダの識別のポイント(葉の切れ込みや胞子嚢群(ソーラス)の違いなど)を学びつつ、苔と見間違えそうなシダや、生活の中で利用されてきたシダなど、「シダ愛」たっぷりで解説いただきました。

一方で、日当たり環境の変化とシカが食べないということから、ナチシダやイワヒメワラビが増えている状況などを確認し、春日山原始林の現状についても少し説明をさせていただきました。ただ図鑑では、「食べない」となっている種類のシダも一部食べられているところもあり、シカも食糧に困っている状態にあるのでは?という話もでてきました。

最後に、木下さんが春日山を歩かれて本来はもっと多様なシダがいてもおかしくない環境であるにもかかわらず乾燥が進んでいて残念だ。というコメントがあり、もっと多様性のある春日山を目指して、様々な取り組みを進めていきたいと感じました。

今回見つけた(解説してもらったシダ)

カミガモシダ、マメヅタ、イワヒメワラビ、ナチシダ、ノキシノブ、ビロウドシダ、ウチワゴケ、アカシダ、イタチシダ、タチシノブ、イノデ、フモトシダ、ヒメクラマゴケ、イワガネソウ、オオバノイノモトソウ、ジュウモンジシダ、コウヤコケシノブ、トウゲシバ、シシガシラ、ミツデウラボシ、ゼンマイ、ウラジロ(全22種)

【参加者からの感想(抜粋)】

とてもわかりやすく、初心者向きの説明だったので、なんとか覚えられそう、という幻想を抱かせてもらました。

観察会テーマ(シダ)自体が興味深く面白かったということもあるが、講師自身がいかに楽しんで対象に取り組んでいるかということが強く伝わってきたという点においても本日はすばらしかった。

先生は丁寧な話っぷりでわかりやすかった。何より、シダへの愛が伝わってきてこちらもときめく気持ちになれた。時間、ボリューム、距離、気候もちょうど良かった。

 


9/12 第29回 春日山原始林観察会 春日山でシダにまみれる 参加者募集!

暑い日が続いてうんざりしますね。
春日山原始林も暑いことは暑いのですが、夏は一年で一番影の濃い季節となりますので、森の中は少し涼しい。
特に、川沿いを歩く、北部遊歩道や、滝坂の道はお勧めですよ。

さて、お待たせしました!第29回目となる観察会の募集を開始します!是非ご参加ください。

第29回 世界遺産春日山原始林観察会
春日山でシダにまみれる

春日山原始林には、160種のシダがあると言われていますが、そのうち22種においては、減少傾向にあるとも言われています。
正直、中の人も詳しくなく、どちらかというと増えている種(ナチシダやイワヒメワラビ)しか知らないという始末。

今回の講師は、吉野で私設の小さなシダ植物専門の植物園「しだのすみか」を開設している木下さん。シダ植物の不思議や、観察の面白さを教えてくれます!
春日山原始林はシダから見て豊かな森と言えるのか?その辺りも伺いながら楽しめればと思います。

実施⽇:9⽉12 ⽇(⼟)10:00〜13:00(予定)
参加費:500 円
定員:20名(春日山原始林を未来へつなぐ会会員は無料)

講師:木下茉実さん(しだのすみか)

中学生ごろから、園芸好きの母の影響でシダ植物に興味をもつ。社会人になってからは、自己紹介にシダ植物が好きであると公表。2018年にSNSで「きのシダ日記」をスタート。シダ植物についてもっと知りたくなり、クラウドファンディングで「日本産シダ植物標準図鑑Ⅰ・Ⅱ」の購入プロジェクトを企画・達成!
吉野町在住の支援者にリターンの手描きポストカードを手渡しに来たことをきっかけに2019年吉野町地域おこし協力隊として移住。2019年4月、自宅敷地内にシダ植物専門植物園「しだのすみか」をオープン。現在、採取してきたシダを顕微鏡で見たり、標本を作ったり、様々なセミナー等のできる「しだのこLabo」を準備中。
https://shidanosumika.jp/

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、マスクの着用にご協力ください。
※この活動は、ならコープ「環境活動助成」を活用して実施します。

お申し込みフォーム
https://forms.gle/5HBcyxZzc6QKQCds6


7/4 夏の森できのこを見つけよう 開催しました!

第28回目のとなる、世界遺産春日山原始林観察会を開催しました。

今回のテーマは「きのこ」実は、これまでアンケートで度々希望があったテーマで実施しました。通常の観察会では、雨天の場合は中止とすることが多いのですが、今回は、湿った環境で観察がしやすいということもあり、講師の先生にもご相談して雨天決行としました。

今回、講師をお願いしたのは、京都大学フィールド科学教育研究センター助教の赤石大輔さん。京大の「森里海連環学教育研究ユニット」で、市民参加型の学びの場「京と森の学び舎」というプログラムを担当、自然共生や持続可能な社会づくりを地域と共に考える機会を創出されています。一方で、元々、キノコにつく甲虫を研究されていたこともあり、キノコにも詳しい。

きのこ初心者の方でも関心が湧くような視点で解説していただけるのでは?と思いお願いしました。

冒頭は、赤石さんより、キノコに関する簡単なレクチャー。春日山原始林で観察しやすいキノコの分類として、テングダケの仲間、イグチの仲間、ベニタケの仲間の3つが、観察できるのではないかとのことでした。参加者の皆さんは、キノコに関心はあるものの、よく知らなかったキノコの世界について興味津々。雨も少し弱まったところで歩き出しました。

春日大社境内から春日山遊歩道(北部)への道すがらで、たくさんのきのこに遭遇。ちぎると色が変わるもの、食べると美味しいきのこ、冬虫夏草の一種など次々発見して、なかなか先へ進みません(汗)

春日山遊歩道でも、普段はキノコの印象はあまりないのですが、キノコの目線(キノコ眼)でみると、次々に発見。卵のような形から生まれるようなテングタケの仲間、カブトムシの匂いがするベニタケの仲間、傘の裏がスポンジ状のイグチの仲間など、想像していた以上に多くの種類のキノコに出会えました。

キノコには、色々種類があり、朽ちた木を分解するキノコや、木の根から栄養を受け取るキノコなど様々であることなど、樹木とキノコの共生関係について知り、食べると美味しいか。形や構造の特徴を丁寧に解説いただくなど、雨の中ではありましたが、充実した観察会となりました。

他にもキノコにつく、キノコムシの仲間や、大きなシーボルトミミズ、ヤマビルにも?出会えて雨の日ならではの春日山を体験いただく機会となりました。

 
一方で、雨によって水谷川の流れが早く、土砂の流出がみられること、鹿の食害と関係しているナギやナンキンハゼのこと、植生保護柵やナラ枯れなど原始林の抱えていることについては、事務局側から簡単に説明をさせていただきました。

参加者のアンケートを見ると

・普段聴けないことがわかった

・とても親しみやすく、身近に感じた

・身近に色んなキノコがあること知った

・もっと聞きたかった

・非常に楽しかった

という声をいただきました。

まだまだ知らない春日山の自然、今後もさまざまなテーマで開催しますので是非ご期待ください。

※当会観察会では、奈良県からの許可のもと、春日山原始林の保全に関わる普及・啓発活動の一環として、観察の際に止むを得ず必要とされる若干量を採取し、参加者の皆様の理解を深めることにしております。一般での採取・持ち帰りは禁止となっておりますので、ご注意ください。