春日山原始林を未来へつなぐ会

観察会

【レポート】9/11 第37回春日山原始林観察会 春日山原始林のきのこ、ときどき野鳥

9/11(日)に第37回の観察会を開催しました。

今回のテーマは「春日山原始林のきのこ、ときどき野鳥」です。

講師に山田瑠美さんをお招きし、きのこについてたっぷりお話いただきました。山田さんは、日本野鳥の会奈良支部や奈良県理科の会、ベニタケ科研究会に所属されていて、きのこにも野鳥にも詳しい先生です。

 

出発前に先生にご用意いただいた資料などで、きのこの生態やつくりについて簡単なレクチャーをしていただきました。

資料には、春日山原始林で見れるカラフルなきのこやトゲトゲしたきのこ、ひょろひょろのきのこなどの写真がたくさん載っていて、観察会への期待が高まります。

 

 

今回は、参加者の皆さんと北部遊歩道沿いのきのこを探しながら、見つけたきのこを実際に採取してじっくり観察しました。(観察会中のきのこの採取は、奈良県の許可を得て行っています。)

 

歩き始めてすぐに白く大きなきのこは「マントカラカサタケ」を発見しました。

「傘を手で包むように触ってみてください」と言われ、実際にやってみるとマシュマロのようにとても柔らか。フワフワなきのこを初めて知り、とても驚きました。

ようやく北部遊歩道に到着。落ち葉の上、木々の間、苔の上と目線を移しながら、まるで宝探しのように皆できのこを探します。

 

遊歩道を歩くうちに、参加者のみなさんも段々と目が慣れてきて「ここにありますよ!」とか「これはきのこですか?」といった会話が増えていきました。

春日山原始林でよく見かける「ナギナタタケ」ですが、今回の観察会では「ベニナギナタタケ」と「ナギナタタケ」の両方を見ることができました。また、春日山原始林を歩きなれている先生も初めて見るきのこを発見したりと、とても盛り上がりました。

きのこといえば、多くの人が食用かどうかが気になるところだと思いますが、色や形、におい、さわり心地の違いを楽しむことも魅力の一つだと思います。

特にひだの部分に傷をつけると色が変わったり、傘に傷をつけると乳白色の液体が出たりといった変化はまるでマジックを見ているでした。

さらに、傘やひだの付き方、柄の模様など細かなところをよく観察すると、そのバリエーションの豊かさに驚かされます。

 

今回の観察会では、約3時間で40種程度のきのこと出会うことができました。前回の「粘菌」観察会に続き、今回の「きのこ」を通じて、さらに小さな生き物たちに親しみを持つ観察会になりました。

 

自然界でのきのこは栄養の取り方によって、2つのグループにわかれるそうです。

1つは「腐生菌」と呼ばれるグループ。朽木、切り株、落ち葉などに付くきのこです。朽木などを分解して、土に還す役割があり、森の掃除屋とも呼ばれています。

もう1つは「共生菌」と呼ばれるグループ。生きた木々と共に生きているきのこです。土の中に菌糸を巡らせ、植物の根っこに共生します。共生する根から糖類などを受け取り、菌類が作ったミネラル分や水を植物へ届けるそうです。

 

-農林水産省 aff(あふ) バックナンバー 2021年 10月号 「不思議がいっぱい!きのこの生態と豆知識」より-

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2110/spe1_01.html

 

春日山原始林の巨木と言われる樹高も樹幹も大きな木々も、こうしたきのこの役割で支えられている側面があるのだと再認識し、きのこへの興味がさらに深まりました。

 

先生のお話ですと、温暖化の影響か原始林内でも南方系のきのこが増えているそうです。観察会でも実際にいくつかの種類を観察することができました。僅かな環境の変化にも、きのこは敏感に対応しているんだなと驚きました。

 

今回の観察会で、きのこの魅力をさらに知ることができました。きのこを探しながら歩く日々が、これからも続きそうです。



第37回春日山原始林観察会
春日山原始林のきのこ、ときどき野鳥

クマゼミやアブラゼミの合唱から、ツクツクボウシに変わり、夜の虫も鳴き出しました。
第37回となる世界遺産春日山原始林観察会は、きのこをテーマに開催します。

講師は、奈良県理科の会、ベニタケ科研究会、日本野鳥の会奈良支部の山田るみさんをお迎えします。きのこ、ときどき野鳥の楽しい観察会となるかと思います。是非ご参加ください。

春日山原始林のきのこ、ときどき野鳥


【開催日時】 2022年9月11日(日)9:00〜12:00(予定)
【講  師】山田瑠美 氏
      奈良県理科の会、ベニタケ科研究会、
      日本野鳥の会奈良支部
【集  合】春日大社本殿バス停(国宝殿カフェ鹿音前)
【観察場所】春日山遊歩道北部
【参 加 費】500円(つなぐ会会員は無料)
【定  員】20名(先着順)
【持 ち 物】飲み物、タオル、筆記用具等
      ルーペ・双眼鏡(お持ちの方)
【服  装】動きやすい服装(長袖、長ズボン)、
      帽子着用、スニーカー
【申  込】以下よりお申し込みください。
※この観察会はならコープ環境団体活動助成を活用して実施します。


※携帯電話のアドレスで登録すると、メールが受け取れない場合がございます。携帯電話の設定で「kasugatsunagu@gmail.com」からのメールを受け取れるように設定してください。


【レポート】7/3 第36回世界遺産春日山原始林観察会「春日山原始林の粘菌」

迫りつつある台風4号の影響で、不安定な天候のもと、第36回の観察会が開催されました。今回のテーマは「粘菌」。

これまでの観察会でアンケートをとった際に希望のあったこのテーマです。講師をお願いできる方はいないかと、メンバーで検討してダメもとでお願いしてみようと2021年に相談したのが、今回の講師の川上新一先生でした。

和歌山県立自然博物館で粘菌について研究されており、図鑑等でも粘菌の魅力を発信している先生に来てもらえることになり喜んだのですが、残念ながらコロナによる緊急事態宣言により、延期に。
2年越しでようやく開催となりました。

ただ、生憎の空模様。予報はほぼ1日雨。とはいえ、忙しい先生のスケジュールもあるので今回は中止できないと思い、雨天決行とさせていただきました。

冒頭にご用意いただいた資料をもとに、粘菌(変形菌)について簡単な解説をいただきました。粘菌には、①変形菌と②細胞性粘菌、③原生粘菌の3種があり、今回観察するのは①の変形菌で、②③については、顕微鏡等でないと観察が難しいそうです。

粘菌の特徴はなんといっても、そのライフサイクルです。胞子で飛ばされたあと、アメーバ状→変形体→菌核→子実体と、胞子で増えるもののキノコなどの菌類(真菌)とも異なり、しかも自ら移動することができるというところ。
(詳しくは以下をご覧ください。摩訶不思議な単細胞生物〈変形菌〉に興味が尽きない!<Webマガジン「BuNa」>

今回は、参加者の皆さんと一緒にガサゴソと枯れ葉や朽木を探し、「これかな?」というものを川上先生に見ていただくという形をとりました。

今回は、朽木の多い滝坂の道を目指して歩きます。途中、落ち葉の溜まった白乳神社周辺エリアで観察開始です。

ごろごろどかーんと雷が響く中、枯れ葉を真剣に探す参加者のみなさん。天気が悪くて、ハイカーが歩いていないのが幸いしました(笑)

落ち葉を探る参加者、何をやっている人たちだろうと怪しまれそうです。

冒頭に普段から粘菌観察されている方が易々と見つけたのですが、普段、昆虫や小さな花、苔などを見つけては観察する参加者の皆さんは「どこらへんにいるのかの想像がつかない」と悪戦苦闘。

それでもようやく見つけた「カンボクツノホコリ」「ナミウチツノホコリ」をそれぞれ回しながらルーペで観察します。

ルーペを使って観察。おぉ〜、きれ〜い。などの感嘆の声が漏れます

場所を移動して、滝坂の道の手前、通称滝坂の森周辺に、ここまでくると、皆さん落ちている朽木に何かないかと探し回ります。ここでは、下見で見つけてあった、「マメホコリ」を観察。そのほか、参加者の方が根気良く探してくださったり、それぞれが粘菌の目になって森を探し回ります。

先生、これはどうでしょう?と聞くと「おっ!これは…」と見ていただき、「やりましたね」と言われるととても嬉しいです。

その後、滝坂の道の春日山原始林エリアまで移動、ムクロジの小さな花が道いっぱいに広がっていました。カギカズラの花を観察したり、毛の生えたカタツムリを発見したり、粘菌以外にも小さなキノコ(菌類)やタゴガエル、例年より早くなき始めたヒメハルゼミの声、ムラサキシキブの花なども楽しみました。
小さなものを探すことで、普段見過ごしてしまうそのほかの森のいろいろな生き物たちに目を向ける機会ともなりました。

タゴガエル
ムラサキシキブの花
キノコの仲間

13時からスタートであっという間に3時間。降ると言われた雨もなんとかもってくれて、満足感のある観察会となりました。

■観察することができた粘菌(全9種)
・コシロジクキモジホコリ
・カンボクツノホコリ
・ナミウチツノホコリ
・ススホコリの一種
・マメホコリ
・ホソエノヌカホコリ
・ヒメカタホコリ
・ウツボホコリ
・アオモジホコリ
(下見では、ムラサキホコリも発見)


事務局スギヤマは、初めはなかなか見つけられませんでしたが、徐々に目の付け所を覚え、ホソエノヌカホコリ、ヒメカタホコリ、アオモジホコリの3種を発見。「粘菌の目」を手に入れました。

ホソエノヌカホコリ
ヒメカタホコリ
アオモジホコリ

粘菌の自然界における役割の仮説としてご紹介いただいたのが、バクテリアやカビ・キノコといった「分解者」を粘菌が食べることによって、分解を遅らせている。ということ。それにより、多くの生き物の棲家の提供や、落ち葉などの保水効果を発揮させ、土壌流出を抑えることで、生態系の維持につながっているのではないか。というものでした。
今回、川上先生も初めて春日山原始林の粘菌を観察されたこともあり、春日山原始林のどのような粘菌が存在しているかはまだまだ未知数です。ただ、こうした小さな存在も、春日山原始林を未来へ繋ぐための大切なのだと、改めて実感することができました。

今回は全て子実体の観察だったので、川上先生にお願いして、先生の著作を購入させていただいたので、これを見ながら、今度は変形体の状態を探してみたいと思いました。意外と身近に存在している変形菌、図鑑を片手に近くの公園をガサゴソするのも面白いと思います。

 

変形菌 発見と観察を楽しむ自然図鑑(山と渓谷社)