春日山原始林を未来へつなぐ会

事務局日誌

第4回 世界遺産 春日山原始林観察会 植物編

2015年10月16日

これまで、巨樹・巨木、地形、は虫類・両生類、と実施してきた春日山原始林観察会。
第4回となる今回は講師に元奈良女子大学教授の菅沼孝之さんによる『植物編』を実施します。

第4回世界遺産 春日山原始林観察会 植物編
講師 菅沼孝之 氏(元奈良女子大学教授)

菅沼先生の春日山原始林への思いを
午前中は、晩秋の原始林を歩きながら、
午後は講演を通じて伺います。
これからの森と人との共生のあり方を
一緒に考えてみませんか。

日 程 2015年11月29日(日)10:00~15:00 小雨決行
集 合 春日大社本殿バス停前
https://www.google.co.jp/maps/@34.6816004,135.8461916,20z
JR奈良駅、近鉄奈良駅から奈良交通バス
市内循環・外回り循環「春日大社表参道」下車、徒歩約10分

スケジュール 10:00集合~春日山原始林~12:00頃春日野園地~(昼食)13:30~講演会『春日野国際フォーラム 甍(元新公会堂)』15:00解散予定
定 員 30名(先着順)
参加費 500円(保険料・資料代)
持ち物 昼食、飲み物、筆記用具、雨具、ハイキングのできる服装で。
申込み 必要事項を記入の上、FAXまたはEmailにてお申し込み下さい。
     1. お名前 2.ご住所 3.電話番号もしくはEmail

お申込先
Email kasugatsunagu@gmail.com
FAX 0742-55-8368

ナラ枯れ対策の作業を実施しています。

2015年09月30日

春日山原始林内での保全活動として、9月に林内にナラ枯れ防除対策として、ペットボトルトラップを設置しています。
本来は、ナラ枯れの原因である「カシノナガキクイムシ」は初夏に大量に発生するのですが、今年のナラ枯れ被害が深刻なため、少し時期は遅くなりましたが、この作業に取り組むこととなりました。
トラップは、ペットボトルの注ぎ口付近を切り取って逆さにしたような形のものを沢山連結させて、それを設定した樹に3セット設置し、一番下の所にペットボトルにアルコールを入れた容器を取り付けるというもの。
樹1本につき3セット取り付けるため、十数セットとなりました。
保全ワーキンググループのメンバーの皆さんと、原始林内まで運搬して、まずはある程度組み立てます。
その後、設置する樹まで運び、3人グループで設置しました。 作業を設定していた日が雨天で中止となるなど、なかなか作業が進みませんでしたが、なんとか予定していた数のトラップを設置することができました。

そして、本日、設置したトラップにどの程度カシナガが捕獲できているか、トラップの保守管理作業を行いました。
この時期は、カシナガの活動が低下する時期なので、捕獲数はあまり期待できませんでしたが、場所によっては数千匹も捕獲できている箇所があったり、トラップの効果が発揮されている事が分かりました。
(下写真は、トラップ下部取り付けた誘引材の様子。カシナガ以外の昆虫も入っていました)
ところで、カシナガって何?という方のために、少し説明を。
現在原始林の課題の一つとなっている「ナラ枯れ」の原因とされるのが、この「カシノナガキクイムシ(通称カシナガ)」です。このムシが、樹に入り込んで「ナラ菌」を繁殖させてしまうことで、樹木が枯死してしまいます。
(詳しくは、奈良県ウェブサイト「ナラ枯れについて」をご覧下さい。

で、どんなムシなの?という疑問があると思いますので、写真をアップしておきます。
ルーペで拡大していますが、実際は5mm程度の米粒くらいのムシです。
これが、数千匹も樹に入ったら・・・。枯れてしまうのも仕方ないと思ってしまいます。
私達にできることは微力ですが、少しでもナラ枯れ被害を食い止めることにつながればと思います。
(事務局 すぎやま)

春日山原始林入門講座 第3回 動物編を実施しました。

2015年03月26日

本日、春日山原始林入門講座の第3回を実施しました。
1月から月1回のペースで実施してきた入門講座も最終回です。
今回は、「動物編」として、以下の講義を行いました。

・春日山原始林のほ乳類 講師 鳥居春巳 さん(奈良教育大学 特任教授)
・春日山原始林の野鳥  講師 川瀬浩 さん(日本野鳥の会 奈良支部)

最終回ということもあり、今回は最後に参加者の方々から意見を伺うフリーディスカッションも行いました。

■春日山原始林のほ乳類
鳥居先生は、長年春日山原始林のシカを研究されており、奈良県の「奈良のシカ保護管理計画検討委員会」の委員も努めていらっしゃいます。そのため、冒頭は奈良公園のシカ、及び春日山のシカの話を中心にお話しいただきました。

基本的なこととして、奈良公園の平坦部と春日山にいるシカは「別の生き物」と考えた方が良いというくらい、違っているそうです。人間に慣れている平坦部のシカと、人になれていない春日山のシカとは、修正も大きく違うということでした。

また、原始林内のシカについては、周遊道を時速10キロ位で走りながらライトを照らし、反射したものを数える「ライトセンサス」という方法と、決められたエリアを横並びに一斉に歩きながら調査する区画法の二つを行い、そこから想定して概ね90頭程度が生息しているのではないかとのことでした。

この頭数が多いか少ないかという点については、環境省が提示したシカの適正頭数というのがあり、それで考えると原始林を約300ヘクタールと考えると2頭程度ということで、原始林内も奈良公園の平坦部同様にシカが相当増加しているということでした。

それでは、シカ以外にどのような生き物が生息しているのか。
モグラやコウモリ、サル、ウサギ、リス、ネズミ、イタチ、タヌキ、アナグマ、イノシシ、などの他、外来種とされるハクビシンやアライグマ、ヌートリアなども観測されているということでした。
ただし、これまでに観測されているものなので、現在は絶滅しているものもいるのではないかということでした。
その理由として、原始林の乾燥化により、これらの動物たちの生息する環境が少なくなってしまっている。ということです。

県が設置している植生保護柵などを作ることで、下層植生が少しでも回復していくことで、ほ乳類の生息環境が整えば戻ってくるのではないかというお話もいただきました。

鳥居先生のお話は、少し過激な発言とユーモアが入り交じりとても興味深く伺うことができました。

■春日山原始林の野鳥
最後に、野鳥の側面からすると原始林の今の状態は絶望的である。ということでした。けれど、何もしないわけにはいかない。少しでも良いから、原始林の生態系を豊かなものへ戻していくことをすることが大切なのではないかということでした。

■参加者の方々とのフリーディスカッション
最後に、会場の方々と今後のつなぐ会の活動について期待することや「こんな事をやりたい!」と行った意見交換の場を持ちました。はじめは遠慮がちでしたが、様々意見をいただき、また、講師の鳥居先生も色々な情報やご意見をいただく事ができ、充実した内容となりました。
次年度以降、具体的な活動に向けて準備を進めているところですが、原始林の未来を皆さんでどのように描いていくか、それは、「つなぐ会」だけでなく、様々な関係者の方々と手を取り合いながら進めることが必要だと感じました。

(文責 事務局 杉山拓次)